騎手にしては珍しく,持て余すほどの筋肉を持ち,それに頼って文字通りねじ伏せる逃げの競馬を展開する主人公・日下部一輝。その妹で厩務員の一那。ふたりのライバル騎手。この4人の視点で1章ずつ構成する連作形式。
私自身は競馬の趣味は無いですが,作者が相当勉強しているようで,レースはもちろんのこと,厩舎の風景に至るまで,馬の周囲の臨場感は良く伝わってくる。面白い場面もあって,電車の中で何回か吹き出した。
ただ,連作短編にしているせいか,ひとつひとつのエピソードの背景の書き込みが希薄。クライマックスと思われるシーンまで「えっ,これだけ?」と首をひねらずにいられない感じも正直なところあり。
というわけで,期待している作家なんですが,前二作に比べるとどうしても星を落とさざるを得ません。