私は在日朝鮮人という存在自体は興味が無い。ただ、彼らとは違う方向で差別を受けていた自分は面白く読ませていただいた。ときに頷きながら、ときに眉をひそめながら読んだ。けれど、最後がハッピーエンドなのはいかにも作り物、という気持ちがした。実際に虐げられる立場にいるからわかるけど、そんなにうまくは世の中まわらないと思います。それで☆4つです。
円から踏み出そうとするけど、なかなか実行に移せない。作中で主人公はそんな心境に陥る。自分にも経験があるからわかりましたけど、一度でも差別・侮蔑・中傷などされると、それを起こそうという勇気がしぼんでしまうんですよね。またああなるかも……なんて感情が湧いてくるんです。そういうのってたとえば、仕事でミスをしたとか、車で物損事故を起こしてしまったとか、電車にカバンを置き忘れた、なんていう種類の失敗とは根本的に違うんです。人種・ルックスなど、そんな『人間として』の部分が否定されてしまうと自分でも驚くほどに臆病になってしまいます。そうした心の機微をうまく人種問題に絡めて描かれているのがこの本です。
私は差別を受けた経験を思い返しながらページを捲っていました。主人公に自分をあてはめて。そうして文章から受け取ったのは、とにかくがむしゃらに生きろ、ということ。そうすりゃ、辛いこともあるけど人生楽しくなるからな。思い切って円の外側に出てみようぜ、そんなメッセージを受信しました。コミカルな表現と共に伝わってくるそれらをかみ砕いていると、なんだか私にもできそうな気がしてきました。まあ、気がしただけかもしれませんけど(笑) それをするかしないかは、結局自分次第ってことですよね。
人間として差別をされた経験を持った方は少ないでしょうが、そんな方にこそ読んで欲しい小説です。笑いどころが多くて、じめじめしていないので鬱鬱とした気分にはならずに作者からのメッセージが受け取れるかと思いますよ。