著者は他の著作に詳しいのですが、一貫して自我の成長を唱えます。個人の幸福には
最終的には自我の成長が必要であるという主張です。この場合の自我の成長とは、ト
ランスパーソナル心理学の成長モデルであり、仏教でいうところの悟りへ向かうこと
であったりします。
この主張は経験に裏打ちされており、他のスピリチュアル系著作と比較して、著者の
経歴(元ソニー役員、CD, AIBO 開発者)と相まって、かなり理論的で地に足がついて
います。ある日突然目覚めたりという話はありませんし、経験的にサラリーマン社会
にも詳しく、現代社会一般の価値観を前提とした現実的な視点からのスピリチュアル
へのアプローチが素晴らしいです。
さて、本著作は自我の成長を社会の成長に準えており、これは現実に連動すると言っ
ています。つまり、自我の成長を果たした人が一定数の割合を超えた社会は、それに
連動して成長し、拝金主義的なエゴ等を脱却して、社会を構成する人間の本質的な幸
せを実現していくと主張しています。
まさにその通りと思わなくもないのですが、いったいどれぐらい時間を要するのだろ
うという疑問というか、諦めに似た感想を抱いてしまいました。反面教師として挙げ
た国会中継を見ると、ほんとに道は遠いと感じてしまいます(笑)
実践は非常に困難ですが、具体的施策のヒントがいっぱいあります。軽く読めるので、
著者の思想(他の著作)に違和感がなければ楽しめると思います。経済学的な視点の
社会の成長をばっさり切って捨てた部分が、非常に気持ち良かったですよ。