青春そのものと言っても過言ではない、私にとって大切な小説。
当然当時発行の文庫は持っているけれど購入。
イラストは羽海野チカさんのものが一番好きだったので
そのあたりは多少残念ではあるものの
2冊分がひとまとめになっている点、最終巻と同じサイズになる点は嬉しい。
再収録分について多くを語るつもりはないが
パワフルでキュートな朱音を主人公において
ライトノベルらしい軽くスピード感のあるテンポと
重く痛々しい心情のバランスが程良く
随分前の、それこそテレホンカードが普通に出てくる時代の物語なのに
違和感を然程感じない。
初めて読んだときに感じた『熱』を、今も変わらず感じることが出来る。
書き下ろしは『あたらしい朝』。
個人的に、尚と藤谷さんの若い頃の話は好きなので嬉しい。
必死にやりたいことに食らいついて、好きだからやっているはずなのにわからなくなってきて
辛い気持ちですら麻痺して、そんな自分に嫌気がさして
壊れかかっていて、いっそ壊れないことが苦しい。
尚の痛々しい日々がぐさぐさと突き刺さってくる。
この頃の彼にとって、どれだけ藤谷さんが眩しく、羨ましく、憎い存在だったことか。
そしてこの頃の彼にとって到底信じられないことだろうけれど
藤谷さんにとって尚がどれだけ眩しく、羨ましく、憎い存在だったかと思い、二重に痛く息苦しくなる。
先生としか呼ばれない日々。
誇りでもあり重荷でもある。
みんなが敬意を払い、先生にへりくだって仕事を頼んできてはネームバリューを利用しようとする。
そんな中で藤谷個人を見て、「一緒にやろう」と言ってきた尚の存在がどれだけ貴重だったのか。
「うるさい」と叱ってくれる尚という音があって
羨ましく疎ましく
それでも、目が覚める。
朱音ちゃんじゃないけれど、男同士であることが羨ましくなる、人と人かつ音と音の素晴らしい関係。
次巻以降も楽しみ。