この巻(開封3)は、GHQ焚書図書のなかから、当時の人々の国家や戦争に対する率直な気持が描かれている9冊を選んで西尾氏が解説を加えたものである。いずれも昭和13年から17年にかけて出版されたもので菊池寛の名著『大衆明治史』を除くとほとんどが兵士や銃後の人々の生の声が綴られた本である。
支邦事変に応召した兵士たちの素顔を描いた『一等兵戦死』、予科練出身の少年兵がマレー沖海戦の戦果を語った『空の少年兵戦記』、当時の日本人の気持ちがよくわかる。
一方、支邦事変勃発により帰国した中国人留学生が兵士に取られ従軍したときの手記『敗走千里』は、中国軍の軍ともいえぬ悲惨な実態が描かれている。盧溝橋事件に始まる支邦事変の実態を知るのによい資料となるだろう。
最終章に溝口郁夫氏の大変な労作である7111点に及ぶ没収本のデータベース化とその分析結果の一部が示されている。GHQの占領方針は、米国に都合のよい史観と思想を日本人に押し付けるため、戦前・戦中の本(昭和3年以降)の本を没収し、「太平洋戦史」に始まる史観を強要し、陰湿な検閲を行った。足掛け7年に及ぶ日本占領は、米国の意図以上の成功を収めたことになる。独立して60年近くになってもその呪縛が解けない。