全体的なスタイルとしては全くのオーソドックスなデトロイト・テクノで、新しいことをやっているということは全くない、と言い切ってもいいです。しかし、一曲ごとに大抵一カ所は「おおっ」と思わせる部分があるのです。
全くのドラムレスの#2、そこに#3のリズムトラックが徐々に入ってくる部分(このCDは曲間の一部がDJ-MIX風に繋げられているのです)、トライバルな雰囲気からピアノ音の独奏になり、またリズムトラックが入ってきて嫌でも高揚させられる#4、音全体に様々なエフェクトをかけるだけで一曲聴かせてしまう#5、上物が歪みまくって転調する#7、今度はドラムレスで曲全体が歪んで転調する#9、ロマンティックで大仰な上物とストイックなリズムセクションの対比で聴かせる#11、特徴的なエレクトロのリズムの#12、エレクトロのリズムと均一に連打されるシンバルの対比が印象的な#14、どことなくJeff Mills風ハードテクノにブレイクする部分で女性の声のサンプリングが乗る#15、上物とキックのリズムが微妙にずれていて目眩を起こさせるような効果がある#17、4つ打ちのキックのみのリズムにハウス風のドラムの音がフェイドイン・フェイドアウトする#19、などが聞き所でしょうか。
このようにCD全体に様々なアイデアが溢れています。また単に曲同士が繋げられていると言うだけでなく、個々の曲の展開そのものもDJ的な視点・アイデアから作られているように思います。アルバム全体の構成もよく練られています。
一曲一曲が長くはなく20曲も納められており、色々と楽しめてお得感もあります。「Jaguar」がデトロイト・テクノ最後の名曲だなんて失礼なPOPを付けていたレコード屋があったのですが、いやいや、まだデトロイト・スタイルのテクノは生きていると確認できる一枚です。
国内盤も発売されています。