一気に話にのめりこんで、泣いたり笑ったり感動したり、自分も同じ町の住人であるかのような錯覚にとらわれるほど面白かった。登場人物たちは、それぞれに辛い思いや悲しい思いをしているのだが、誰ひとりとして後ろ向きではない。「満ち足りない日々を送る中年の主婦エヴリン」でさえ、その胸中には共感できるものもたくさんあるが、いつしかそれを克服し、しっかりと乗り越えていく姿が、他の登場人物同様、魅力的である。人種問題のほか、殺人、暴力、同性愛などなど、深刻な事柄もたくさん含まれた話なのだが、ホイッスル・ストップの暖かな空気に包まれると、いつしか悲惨な事件もカフェのひとつのエピソードとなって、人々の心に懐かしく思い出されるといった感じになっていく。エピソードがたくさんありすぎて、何度読んでも「こんなことあったっけ?」といった、その都度新鮮な思いにとらわれるのではないだろうか?