1993年発表のソロ2作目。
当時、前作『Acadie』をイメージしながらリアルタイムで聴いて、絞り出すようなヴォーカルの1、ノイジーなギターが渦巻く2と続き、少々面食らったことをよく覚えています。まるで、静寂に包まれた”Acadie”(英語でいうArcadia=理想郷、桃源郷)の世界に何度も突風が吹き付けて不安をかき立てるような、あるいは狂気が風景を鋭く切り裂くような感覚。サウンドやヴォーカルだけでなく歌詞を含め、アルバム全体が怒りや苦痛、焦燥を吐露しているような切々とした生々しさ、緊張感に貫かれています。
とは言え、穏やかなサウンドの曲も散りばめられ、終盤に向かうに連れて嵐が去って美しい『Acadie』的な世界に戻っていくような気持ちになります。最愛聴盤の『Acadie』ほど聴く頻度は多くありませんが、"聴き応え"という点では本作が上。ラノワ・ファンなら納得、満足の一枚です。
ちなみにタイトルの” Wynona”は、ラノワが少年時代を過ごしたカナダの小さな町。ジャケットはチェコの写真家、ヤン・ソーディックの作品「The Knife」(裸より右手に注目)。この二つの要素が、本作を理解するカギだと思います(個人的に” Wynona”は、純真や無垢、かけがえのないものの象徴、と解釈しています)。
余談ですが、11「Sleeping In The Devil's Bed」は、1991年の映画『Until The End Of The World』サントラ盤への提供曲。本作には一部歌詞が省略された30秒ほど短いEditヴァージョンが収められています(聴いた限り、アレンジ等は同じようです)。13ともども名曲です。