前作『PARADISE LOST』で試みた『ポストロック的な魅力を注入したギターポップ』路線を、前作以上にポップ寄りに、そして高度に作り上げた快作。ART自身もシングル『フリージア』でその路線の完成度を高めていたが、この作品の音づくりが素晴らしいのにはやはり、益子樹氏の貢献を語らずにはいられない。スーパーカーの『HIGHVISION』なんかのあのキラキラ感をそのままARTに置き換えた(もちろんバンドに合わせてはいるんだけど)その仕事はもう、見事としか言いようがない。瑞々しくも鋭さを決して失わないギターの音から、後ろで楽曲にもう一つ花を添えるシンセまで、アルバム中での氏の活躍は驚く他ない。正直前半の何曲かは結構凡作なのを益子マジックが救っている感さえある。
しかし、それでもART自身もこの世界観に相応しい曲をしっかりと作っている。とりわけ木下の作曲スタイルの変化と戸高曲を入れるようになったことは大きい。『PARADISE LOST』のちょっと背伸びした感じのアレンジよりもずっと自然で聴きやすい曲が並んでいて、まあグランジ大好きな人や「ARTは初期!」みたいな人からすればクソなのかもしれないけど、後期スマパンやデスキャブ、あとペイヴメントのラストアルバムなんかにも通じるよるなメロウでどこか現実的な世界観は大いに魅力的だと思う。1の高揚感、木下ソロ時代の曲の美しいリメイク9、新境地な11、ライブDVDではハイライトとなった12、14の感傷、15の優しい夢から醒めるまでと、映像的で美しい曲が揃っている。
それと、一枚としての纏まりがすごく良い。プロデュースのおかげなのかは知らないが、世界観がしっかりと一本通っていて、浸るに十分な音が広がっていて良い。相変わらず木下は情けなくて、青臭くて、そしてなぜかキャリア中でもとりわけ歌が不安定なんだけれど、耽美な幻想と現実との折り合いをつけ、とりあえず一歩踏み出すような力強さ・バンドの一体感は感動的です。成熟を感じさせる、爽快な一枚。