残念ながら、現代の一般的な大学の文系学部における学部生の学力の低下と勉学意欲の減退、そして大学経営者たちの拝金主義と教養軽視の傾向は、もはや歯止めが効かない状態になっていると言っても言い過ぎではない。本書は、そのような状況の中でも、何とか少しでも英語学・言語学に対して学生の関心を向けさせようという苦労がにじみ出ている感のある入門書である。英文の本文に対して和文の解説・まとめ・演習問題がつけられているという基本形式を敢えて選択した点、専門用語にはすべて英文テキストの欄外に和訳と必要に応じて簡単な解説が付記されている点、付属CDに本文を始め方言や古い時代の英語など、大部分の英語教材部分の朗読が吹き込まれており、耳からの充実した学習材料が添えられている等々、著者たちの大変な苦心の跡が随所に感じられ、同じ大学教員として感嘆と尊敬の念を禁じえない。それでいて内容面では決して変に学生におもねるような妥協はしておらず、学部生向きの英語学入門書としてはほぼ充分な量のキーワードや概念が網羅されているといえる。よくぞこの価格とこの薄さでこれだけの内容が詰め込めたものだと、賞賛を惜しまぬ次第である。ただ、私の個人的感想としては、文の意味論と心理言語学の部分にはもう少し話題の広さと深みが欲しかったように感じるし、社会言語学の部分はもう少し簡潔にまとめてしまってもよかったように思う。しかしこれは各人の好みや価値感によって変わってくる問題でもあり、本書の致命的欠点とまでは言えないであろう。ともかく、実に有り難い英語学!テキストの出現である。少しでも多くの大学・多くのクラスで、このテキストが有効に活用されることを望む。