1が1960年10月21日、3が10月24日、2・4が10月26日録音。レコーディング・エンジニアはトム・ダウト、フィル・イエベル。カバー・デザインはローリング・イュティメイ。スーパーヴィジョンはネスカ・アーティガン。
ジョン・コルトレーンはノース・キャロライナ州ハムレットの洋服仕立職人の子として誕生した。幼い頃父と死別、一家はフィラデルフィアへ移り、そこでコルトレーンは音楽を学ぶ。ここがコルトレーンの音楽的スタートだった。その後のマイルスとの出会い、モンクとの出会いについては多くのジャズ・ファンの知り尽くした部分だろう。このアルバムは完全にマイルスから独立し、自分の音楽を創造した最初の作品といえると思う。
ここでコルトレーンが取り上げたアイテム。まず『My Favorite Things』。この曲が『ザ・サウンド・オブ・ミュージック』の中でリチャード・ロジャースによってブロードウエイで上演されたのは1959年のことでこのアルバムの録音がその翌年であることから、コルトレーンはこのミュージカルを観に行ったということになると思える。有名な映画化はこのずっと後で1965年のことになる。つまりコルトレーンは観に行ったミュージカルの『雷を怖がる子供たちを「楽しいことを考えて」とマリアが励ます』シーンで使われるこの曲を一発で記憶した、ということになるようで非常に興味深い。
次にこのアルバムで大活躍するソプラノ・サックスである。プレイの激しさから『怒りのテナー』と呼ばれることをコルトレーンは当時反省していて、『ぼくの音は、まるでテナーの練習音にしかきこえない。今はもっとプリティな音を出そうと心がけています』と語っている。そのひとつの試みがソプラノ・サックスということで、ちょうどマイルスと袂を分かったこの時期にスタートしている。コルトレーンにかかるとソプラノはまるでアラビアのZoukraのような音を出した。16分音符と32分音符を一気に吹き抜くコルトレーンの『音』はここに始まる。
ぼくの頭に初めてジョン・コルトレーンの『My Favorite Things』が鳴った日 。それはぼくがジャズを理解できた日。コルトレーンのこのソプラノを聴くまでぼくはジャズを理解してはいなかった。そしてその日からずっとぼくの心の奥底で彼のソプラノが鳴っている。