前作「69/96」よりギミック的要素はかなり控え目で、
現在のコーネリアスのスタイルを確立する事になる次作「point」より音の情報量が圧倒的に多い。
mp3が普及する直前に生まれた時代の、あるいはコーネリアスサウンド確立前夜の過渡期的作品。
まりんこと砂原良徳がリマスターを担当している、と言えばファンは心踊らずにいられないだろう。
ペットサウンズやミレニアムのようなファンタジックなコーラスワークを駆使した音楽に、
当時流行していたラウンジ、ドラムンベースがエッセンスとして散りばめられているが、アティテュードとしてはロック。
97年盤はドーンという低音域が最も厚く、それが強過ぎて中音域も高音域も呑み込んでしまっている印象だ。
そして、リマスター。
全体的に中音域にぐっと音が集まってきている印象。完全にフロア対応ではなくなった。
特に「star fruit,surf rider」ではそれが顕著だ。
今回のリマスターによって、よい意味で流行というエッセンスのない、
普通のポップソングとして聴ける作品になった。
砂原氏が趣味でやっていたという「自分リマスター」。
この「自分リマスター」という概念が、本作の「肝」だ。
昔レコードからテープにダビングする際に、誰でもイコライザーや録音レベルを駆使してテープに録音していたと思う。
その「自分好みのテープ」の音を繰り返し聴き、いつしか、録音元のレコードよりも、
使い勝手の良いテープの音が記憶や印象の中で「マスター化」する。
誰でも昔は「自分リマスター」をやっていたのだ。
今回は言ってみれば「mp3時代の自分リマスター」と言う事が出来るだろう。
この「自分リマスター」という概念は、新しいアートフォームになり得る可能性を秘めている。
面白い体験をさせてもっらた対価としては、特典ディスクも含め充分すぎるほどだ。