Ken Folletの前作「World Without End」がかなりがっかりする内容だったので、どんなもんかと思っていたが、「The Pillars of the Earth」のクオリティーを取り戻した大作に仕上がっている。
登場人物は例によってやたら多い。一人称で語られるキャラクターだけで7〜8人いる。それぞれの物語が、同時進行で語られていくので、最初のうちは「こいつ、誰だっけ?」みたいな混乱は多少あったが、それぞれの個性が際立っているので、読み進むうちにちゃんと区別がつくようになっている。巻末に登場人物一覧があるので、親切だ。
さくっと簡単に紹介すると、ウェールズの炭鉱労働者で市民運動家の娘エーテルと、その弟ビリー、エーテルが女中として奉公する屋敷の若き当主フィッツと、その妹マウド、マウドと恋に落ちる在ロンドンドイツ大使館員のワルター、フィッツの友人でアメリカ上院議員の息子ガス、革命前のロシアの首都サンクトペテルブルクの貧しい工場労働者グレゴリーとその弟レフあたりが、主要な人物だ。
さて、タイトルの「Fall of Giants」だが、日本語にすると「巨人たちの衰亡」ってなくらいか。この「巨人たち」が何かというのが、物語を読み進めていくうちにだんだんと明らかになる。イギリスでは、それが貴族たちが生まれながらの特権を少しづつ失っていく過程であり、ドイツでは国家自体が無謀な戦争に敗退して衰退していく過程であり、ロシアでは革命によるツァーリ体制の崩壊であった。
物語全体を通じて、この戦争は誰のためのものなのか、何のために多くの人々が招集され命を落としていくのか、そんな問いかけが何度となく繰り返される。誰もが幸せで平穏な生活を望みながら、大きな歴史の激流に翻弄され、それぞれの人生の価値観や信条が試されていく過程が、丁寧に描かれている。感動的なエンディングというわけではないが、時間の経過に連れてしみじみと感じ入る事ができる深い作品だと思う。
物語は、第一次世界大戦の終焉とベルサイユ条約締結を描写し、世の中が一応の平和を取り戻したところで終わっている。私たちは、その後の歴史を知っている。登場人物たちのその後が気になった。もしかしたら、Ken Folletは続編を念頭に置いているのかもしれない。