これは、素直な「ほめ言葉」として言うのだが、「ヒマつぶしの娯楽作」としてはかなり面白い小説。読んでいる間は、ドキドキも知的興奮も、シアワセな気分も味わえる。
ただ、読後感は今一つかな。
最後のトリックは、現実には100%実行不可能。無理にやったとしても絶対に即バレる。
ちょっと読むとすごいアイデアのような気がするけど、細かい所まで完璧にはできない。少し具体的に考えてみると、すぐにおかしいと気付かれるのは明白だろう。
そのリアリティの無さを、「小説の嘘」として楽しめるかどうか。そこが問題だが、私にはこの作品ではちょっと難しかった。
ミステリー小説では、荒唐無稽なトリックの殺人事件が珍しくないけど、それはフィクションとしては許せることが多いよね。でも、この『Fake』のようなコンゲーム小説では、リアリティの無いトリックは、なぜか腹が立つのだが、どうしてだろう。
もう一つ、西村(父)が計画に加わったのは、彼にとって「大事なもの」を守るためだったはずだ。しかしこの結末では、勝負には勝っても、結局、その「大事なもの」は守れないのではないか?
敵はだまされて激怒しているはずだから、仕返しの意味でも、余計熱心に攻撃してきそうだしね。
やっぱり、映画『スティング』のように、敵はだまされたことにも気づかない、そこまで完璧にだまさないと、この手の話は、本当のハッピーエンドにならないと思う。