ロンドン中心地にあるイギリスでも有数のナイトクラブ「ファブリック」。以前よりこのクラブが経営するレーベルがプロデュースする人気
DJのミックス・シリーズ「Fabriclive」は現在50弾以上を数えるが、その第59弾に選ばれたのがロンドン出身Kieran Hebdenによるソロプ
ロジェクトFour tet。元々「Fabriclive」シリーズの存在は知らなかったが、Four tet繋がりということで聴いてみた。彼自身のミックス作とし
ては
DJ-Kicks以来5年振りとなる。
元ネタが他人の楽曲、またミックスCDという性格上楽曲の一部が切り取られ増幅する形で繰り返される為楽曲としての体は弱い。しかし
本作には元の楽曲を分解し再構築するという過程で注入されるKieranのセンスと個性が彼のオリジナル作品に劣らず発揮され、実に快
楽度の高い音が展開される。
元々音要素一つ一つの処理に細かく神経質な人だということは感じていたが、本作でも全体としてはすっきりした耳障りのサウンドスケー
プの中に、スクラッチ・ノイズ・電子音・人の声といった数多の音が素晴らしいほどに美しく点在されている。時折耳に入るメロディも人の声
もとても断片的でうっすら現れては消えていく。これが延々70分以上続くのだが、不思議と聴き疲れしない。
また本作はミックスCDの例に漏れず終始強いビートに貫かれる。作品は21を数える1〜3分の短尺トラックから構成され、ビートも2ステッ
プを軸にしながら少しずつ、だが絶えず形を変える様が面白い。ミックスCDではビートの快感が生命線の様な部分があるが、本作の場合
上物がすっきりしているが故にビートの存在感が立っており、流しっぱなしでもとても心地良い。
ミックスCDという性格上万人には薦めにくいが、Kieran色をしっかり滲ませた美しい作品。軽く聴き流せる点ではBGMにもよさそう。