どのような分野であれ、説明責任を尽くせない問題には、公言を自制するのがプロの職業倫理である。本書は、正体・経歴とも不明の「常勝トレーダー」なる人物を続々と登場させて、検証ゼロのままストーリーを構成し、結果としてチャート分析からトレーディングの必勝法則を導けるかのような幻想を読者に抱かせる作為に満ち満ちている。これが幻想である証拠に、「常勝トレーディング」の奥義を極めたはずの著者の本業は、ありふれたセミナー屋兼商材販売業者である。賢明な読者は、本書執筆の真の動機はトレーダーの紹介などではなく、著者が講師を務めるスクールの有料セミナーへ読者を誘導することだと見抜けるはずである。この手の本にまんまと乗せられ、投資の世界に虚妄を抱く人間が老若男女を問わず実在する現実は、残念ながら日本の金融投資教育の貧困の証左である。ファイナンス科学で武装した本物のプロフェッショナルからは、一笑に付されるマンガ本並みの内容であることを承知のうえで読むなら、世の「自称FXトレーダー」の正体を知る参考資料にはなるだろう。