サブプライム・ショック、リーマン・ショック以後に書かれた、初心者向けのFX(外国為替証拠金取引)入門書。
日経文庫ということもあり、ややお堅い印象でトッツキにくく感じる読者もいるだろうが、その分「簡単、サルでもわかる!」式の入門書よりもかなりシッカリした内容。ただし、「売りポジションを1枚持つ」のような相場用語が説明なしに用いられているケースもあり、全くの初心者は戸惑うかもしれない。
全8章構成。類書と比較して本書の特徴と言えるのは、ファンダメンタルズ(市場の動向に影響を与える経済の基礎的要因)を解説する章を設けている点だと思う。第2章において、円の変動相場制への移行(1971年)からリーマン・ショック(2008年)に至る、40年間に渡るドル円相場の軌跡を描き、その時々の世界的な状況が外国為替市場にどのような影響を及ぼしていたのかを時系列に沿って概観した後、続く第3章では、重要なファンダメンタルズを政治的・経済的・軍事的要因ごとにまとめて解説している。
また、割かれている紙数こそ少ないが、第7章において「資金管理」の考え方、第8章において「システム運用」の意義について触れているのも(入門書としては)珍しく、これも本書の特徴と言ってよいと思う。
第2・3章の約50ページ分だけでも、1000円前後で買える他の入門書1冊を読むより価値があるのではないかと思う。この部分を重要だと思うのは、40年の歴史を振り返ってみれば、「2005〜2007年は、日本の個人投資家にとって、どんな通貨を買っても利益を出すことのできた極めて稀な期間だった」と正しく位置づけることができるから。こんなこと、当時大いに盛り上がっていたFXブームに便乗したお手軽入門書には決して書かれていなかった。歴史を概観するこういった視点によって、限られた範囲の試行錯誤からは決して得られない示唆を得られるのだと思う。