2009年デビュー組の正統派ソロアイドル代表。可愛いだけではありません。
これは昨今の「使い捨て・売り逃げJ-POP」とは一線を画した作品集です。70年代〜80年代アイドル歌手の名作アルバムが時を経て価値を認められ、復刻される例が相次いでいますが、このアルバムはやがてその系譜に連なることになるでしょう。
7つのシングル曲(うち6曲がKAN作曲)はいずれもシリアスで多様性に富む作品群で、女優としても活躍する真野さんの持つ可能性を様々な方向から描き出しています。何より真野さんの、ボーイソプラノのような声質、明瞭な日本語発音のもたらす清潔感・爽快感は抜群で、一曲ごとのドラマを描き出す格好の武器になっています。まさに王道の存在感です。なおライブでは彼女はピアノ弾き語りによって歌います。これも重要な点です。
そして過去の王道アイドル達、麻丘めぐみ、石川ひとみ、松田聖子・・・に通じる点がもう一つ。彼女の歌声に高い知性がはっきり刻印されている点です。歌手とは、曲ごとに異なる世界を声のみで作り出す俳優である訳ですから、これはきわめて重要な事です。世を席巻している、声量やテクニックで威圧するだけの歌手達には求め得ない、そして昔の歌手達が持っていた「物語る心」を彼女もまた持っているのです。
シングル曲中「乙女の祈り」は2009年を代表する傑作。卒業で成就しなかった恋を描いた作品としては、斎藤由貴「卒業」、松田聖子「制服」などの名作がありますが、真野恵里菜「乙女の祈り」はその列に並ぶ金字塔を打ち立てました。また「マノピアノ」「ラッキーオーラ」「ラララ-ソソソ」のインディーズ三部作のもたらす、緊迫感に満ちた、それでいて優しい空気、澄み切った輝きは比類の無いもので、何度聴いても飽きることがありません。KANの陰影に富んだ絶妙なコードワーク、緻密な構成、自然で美しい旋律は近年耳にすることの稀な高度なものです。
聖子さんはじめ幾多の歌手に詞を提供してこられた、日本を代表する作詞家三浦徳子氏の、そして誰もが認める天才メロディメイカーKAN氏の作品集としても味わい深い、繰り返しの鑑賞に耐える一枚です。