「本物のバンドはずっと一緒にはいられないんだ。ずっと一緒にやってるなんてリアルじゃないんだよ」と語るリチャード・アシュクロフト。その言葉通り、リアルの在り処を探るかのようにして何度もお互いを傷つけ合い、お互いを引寄せ合い、解散と再結成を繰り返したバンド、ザ・ヴァーヴ。衝撃のデビューから97年の『アーバン・ヒムス』を経て完全に沈黙すまでの狂気の四年間は、時の経過と共に90年代の神話へと昇華し、次の世代にもしっかりと語り継がれていった。そして迎えた08年。多くの伝説的なバンドが再結成を果たしたこの一年、最も完璧なレベルでそれを成し遂げたのが、このザ・ヴァーヴだった。それは「前進」を意味するアルバム・タイトルにも強く象徴されている。『アーバン・ヒムス』で鳴らされた燃え尽きる直前のピュアネスのような漂白された音像ではなく、どこまでも長大でノイズに満ちた、決して円満具足とは言い難いバンド・サウンド。長いブランクを経ての本当に久しぶりのジャム・セッションでこれが自然と出てきたというのは、それがまさにザ・ヴァーヴというバンドの本質だからだ。彼らの未来は、いつだってこのノイズの「その先」にしかなかった。人と人がリアルに繋がり合うということ。そこには当然のように摩擦が生じる。しかし、それを恐れる必要など何もない。“ラヴ・イズ・ノイズ”。彼らにとって、その摩擦というノイズとは、紛うことなき愛なのだから。