80年代に青春を過ごした年代の方なら、例外なく「ノスタルジー」に浸ることができる一冊です。
副題にもある通り『FMステーション』誌の元編集長さんによる著作。当時のFM放送とFM雑誌にまつわる裏話やFMステーション誌の創刊秘話など、懐かしく微笑ましい内容が楽しめます。読み進めるうちに、中学・高校の同窓会に出席している気分になってしまいました・・・
既に、「FMファン」、「週間FM」、「FMレコパル」の3誌が先行していた所に、最後発として創刊した「FMステーション」。先行3誌への傾向と対策を経て、「POPな」表紙、装丁の「大型化」、「使える」紙面作りなど、それまでローティーンには敷居が高かった「FM放送のエアチェック」を身近な存在にしてくれた、革命的な雑誌でした。各誌のコンセプトも明確だったので、「オーディオ好き=レコパル」、「邦楽好き=週F」、「洋楽好き=Fファン」。そこに後発として参入した「ステーション」。私は、創刊号から飛びついた一人ですが、何が良かったかというと、同誌の「CASH BOX TOP100」。中綴じ体裁の丁度「真中」(番組表の中)にありました。お気に入りの曲やアルバムの「チャートアクション(順位の変動)」を毎号楽しみにしていました。「Fファン」は「Billboard」を掲載していたので、両チャートを比較したりして、妙に納得したものです(1位の曲が違っていることも多かったような気がします)。
エアチェックのための「番組表の見やすさ」も、読者によって好みがあったらしく、各誌とも特長がありましたね。文字色を変えたり、「記号」をつけたり、その見やすさは「学習参考書」並み。制作サイドもご苦労されていたはず。そういえば、エアチェックする番組や曲に「マーカー」を引いたりして、全く試験勉強と変わりませんでした。正直、勉強より真剣に「チェック」していたことは否めません。
鈴木英人氏のイラストでカセットテープのレーベル作り、インレタ転写のタイトル、そして「オリジナルテープ」の編集。全部、手作り。それら一連の作業をトータルに楽しむのが「エアチェック」という当時の流行だったのでしょう。
本誌でも触れられていますが、「CDメディアの誕生」が「80年代音楽の終焉」を招いたことは否定できません。人の手でモノを作る時代(アナログ)の最後が「80年代前半」だったのでしょう。それは、地球規模で「デジタル」社会へ移行した「歴史的時期」でもあります。特に、音楽産業においては、レコード/ラジオという媒体の終焉は、音楽そのものの楽しみ方も変えてしまったのでしょう。
既に、30年近くも経過した現在でも、80年代の音楽は我々の心を捉えて離さないのは何故なのか?それは単なる「ノスタルジー」ではなく、「アナログ」というモノづくりの原点が息づいているからこそ、作り手(表現者)の姿が見えてくるからでしょう。その意味では、当時の潮流を作り上げた「FMステーション」という雑誌の歴史を通じて、80年代という「古き良き時代」を振り返ることができる教養本かもしれません。