主人公、深町ミチオは卒業式にあこがれの山田華に告白するも、彼女がだした交際の条件は、あるピンボールマシンのハイスコアを超えることでした。
傑作『ラブロマ』の最終巻から約1年半、待望のとよ田みのるの新作はピンボールという非常にめずらしい題材をあつかう意表を突く作品でした。
ラブコメではあるのですが恋愛模様は脇にまわり、メインはあくまでピンボール。
ここまでピンボールを主眼においた物語は、コミックのみならずフィクション全般にわたってもかなり特殊です。
濃密なピンボール描写はクセになるおもしろさで、ピンボールのスリルとスピード感、プレイヤーの息がつまる緊張感とハードルをクリアしたときの喜びを十分に疑似体験させてくれ、さらに極度の集中が「むこう側」を見せてくれる場面は本当にすばらしいです(「やっと静かになった」の鳥肌がたつほどの演出は白眉!)。
『スプリンター』『ピンポン』などのある種のスポーツマンガのように「神の領域」をめぐる物語だともいえるのですが、その手のストーリーにつきものの「孤独」「狂気」といった言葉とはまったく無縁で、「むこう側」をみることが全面的にピンボールの楽しさとしてポジティブに語られる健全さは作者の資質だと思います。
1巻完結という点に関しては、多少ヒロインの山田華をはじめキャラクターに寄った物語をもっと見たかったという気持ちはありますが(深町と山田のその後の話を読んでみたい!)、コンパクトにまとまっているがゆえに作品が濃密でブレのないものになっていると感じます。