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最も参考になったカスタマーレビュー
21 人中、21人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
プライスレス,
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レビュー対象商品: FBI美術捜査官―奪われた名画を追え (単行本)
驚くべきことに、1990年から2005年の間に世界中で総額10億ドルを超える絵画が盗まれてきたそうだ。ルーブルは混雑する土曜の午後にコロ―を持ち去られ、オックスフォードでは大晦日にセザンヌが、リオではマティスにモネにダリ、スコットランドの城ではダ・ヴィンチの名作も盗まれている。こうした美術品および骨董品の盗難は、越境犯罪としては、麻薬、資金洗浄、不法武器輸出についで四番目にランクされる。ネットや通信手段、物流手段の発達、ヨーロッパ連合内で行われた税関の改革なども、犯罪を容易にすることを助長しているという。 本書は、こうした美術盗難品における捜査の一部始終を描いた知的ノンフィクション。著者は、FBIの中で長らく美術捜査官として活躍してきた人物で、日本人の血を引いているそうだ。 美術品犯罪の技量は、盗み自体よりその売却にある。作品が有名で価値のあるものほど、売るのが難しいのだ。著者によると美術品泥棒は十人十色であるが、一つだけ共通点があるという。彼らが盗むのは美のためではなく、金のためである。本当に芸術を愛する泥棒であれば、売却しようとはしないはずなので、足が付く可能性も低いのかもしれない。 捜査のほとんどは、潜入捜査にて行われる。その潜入捜査、実際には下記のようなステップで行われる。 ステップ1 ターゲットの見極め ステップ2 自己紹介 ステップ3 関係の構築 ステップ4 裏切り ステップ5 帰宅 潜入捜査の多くは、営業行為とよく似ているそうだ。要は人間の本質を理解することであり、相手の信頼を勝ち取って、そこにつけ込むということなのだ。そういった意味では著者は、凄腕の営業マンだ。潜入捜査のすえ、実際に、犯人を逮捕し、身元が割れたあと、「今回の件では打ちのめされたが、それもしかないと思っている。打ちのめされたのは確かだが、きみとの時間は楽しかった。だから文句はない。」などという手紙が届いたりしている。 その著者のキャリアにおけるクライマックスが、美術史に残る史上最大の事件ともいわれるガートナー事件での潜入捜査である。1990年に起きた、この総額五億ドルともいわれる占有捜査の模様が、ほぼ実話そのままに再現されている。この臨場感は、ぜひ本書にてご確認いただきたい。 著者の美術捜査官としての資質は、いわゆる探偵的なものよりも、美術に関する造詣の深さによるところが大きいのではないかと思う。それは、著者のこんなセリフにも表れている。「美術品泥棒はその美しい物体だけではなく、その記憶とアイデンティティをも盗む。歴史を盗む。」 そのような美術に関する知識を、著者は重罪容疑で起訴されている最中の、特別授業の中で培った。さらにその変わった経験を通して得たものは、物事を白か黒かということではなく、灰色の目で見るということもあったそうである。有罪無罪の別なく、容疑者が何を心から恐れ、何を聞きたがっているか、自分自身の経験を通して理解することができたのである。一体人生で何が功を奏すかなど、わからない。 彼がFBIに在籍した18年間で回収した芸術作品、骨董品など、しめて2億2500万ドル相当。しかし、その価値を決して金銭で測ることはできない。取り返した芸術作品は、人類の歴史を捉えた、かけがえのないものなのである。
9 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
面白い。お薦めです。,
By 公開名 (石川県) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: FBI美術捜査官―奪われた名画を追え (単行本)
「需要は豊かな国が作る」泥棒と追跡する捜査員の駆け引きが絶妙なタッチで描かれていきます。もちろん事実そのままではありませんが翻訳も秀逸で臨場感に溢れています。捜査そのものも読みごたえ十分ですが巨大官僚組織の中で生きる人間模様はどんな組織で働く方にも示唆に富みます。ボリュームが有りますが一気に読めます。読書の秋の一冊にお薦めですよ。
5つ星のうち 4.0
歴史と文化の冒涜への挑戦,
By シン (愛知県) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: FBI美術捜査官―奪われた名画を追え (単行本)
FBI捜査官と言うとあざやかな捜査で犯人逮捕と言うイメージがあるし、盗まれた美術品の取り戻しにはアメリカ映画の派手なアクションを想像してしまう。だが実際は、地道な捜査と犯人グループとの駆け引きや時には命の危険をともなうことを、この本は教えてくれる。そのためもあってかFBI内で市民権が得られるようになったのは比較的最近のことだと言う。著者は美術品に対する確かな審美眼も持ち、犯人に巧みに取り入る技術を持ち合わせている(製品よりもセールスマンを信頼して製品を買う、は納得)。なによりも美術品や骨董品の盗難は、その背景にある歴史と文化への冒涜であると言う強い信念で、著者は犯罪者に当ってきた。ミステリーの様な場面や謎解きは少ないが、活き活きとした描写で読者を引き込んで行く好著である。ここまで明かしたのは、盗難美術品捜査にもっと目を向けて欲しいとの考えと思う。 残念なことに翻訳の手抜きが見受けられる。 原著(ペーパーバック)には俗語が多くて読みづらいので翻訳を手にしたが、スタイロフォーム(発泡スチロール)ベープ(魅力的な女?)アドベ(日干しれんが)等の発音そのままの単語があったり、p.28のgedi in Japaneseに至っては省いてしまっている。このgediは訳者も(私も)分からず、ネットで意見を聞いたようだが、なぜ直接著者に聞かなかったのだろうか。それ以上に残念なのは、写真の半分以上が削除されていること。削除の中には両親の結婚式、著者の家族全員、亡くなった同僚のデニス、がある。花嫁姿の母ヤチヨさん(漢字表記もない、これも著者に問い合わせるべき)の写真は最も美しい写真だが、削除しなければならない理由があったのだろうか。 最後に東日本大震災の被災者へのメッセージを日本語訳に寄せている。
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