原題は "You can negotiate anything"。著者は、彼のホームページによれば、テロとの戦いについてカーター大統領やレーガン大統領のアドバイザーを務めたり、NFLのストライキにかかる交渉に関与したりと、単なる理論家ではなく実務家。交渉の話でよく出てくる「ウィンーウィン」の語も彼の造語らしい。
元の本が米国で1980年に出版されたものであるため、「ソビエト型交渉術」にかなりの紙幅が割かれていたり、カーター大統領のキャンプデービッド合意が登場したりと、一部やや古めかしさを感じさせる部分もある。
しかし、実務に裏打ちされているだけあって、根っこの部分は古ぼけない骨太なものを感じさせる。また、語り口がユーモラスで堅苦しさを感じず、すらすら読めるのもポイントが高い。
「交渉が成立するのは期限切れ直前と考えてよい」、
「交渉は一種のゲームであることを忘れないこと」(最善をつくすが思いつめてはいけない)、
「猿回しが側にいるというのに、なぜ猿に問う必要があろうか」(権限を持つ人と交渉すること)
といった含蓄のある言葉が随所に見出せる。
三笠書房から出版されている知的生きかた文庫「交渉ごとに強くなる法」を改題修正したものなので、安価に購入する方法もあったりする。