マンセルの熱い走りに手に汗握り、一喜一憂させられていた、あの頃。当時を知る者にとっては懐かしい。そして、知らない方々にもぜひ見てほしい。この値段であれば買って損はないでしょう。
フジテレビが作ったこのDVDに、マンセルのパフォーマンスコーナーがある。当時のフジテレビがセナを徹底的にヒーローに仕立て上げる一方で、ライバルのマンセルは、プロストほどではないにせよ「アンチ」として紹介される機会が多かったことを考えると何やら不思議な気分ではあるが、マンセルファンとしては嬉しい事ではあるし、彼をリアルタイムで知らないファンにも、今のF1にはいない個性があの頃にはあったことが分かってもらえると思う。
当時は今よりもコース上でのバトルが多かったことは何人かの方が指摘されている通り。そして、経験豊富で個性的なドライバーがそろっていた。この2点が、あの頃と今との大きな違いだろう。
コース上のバトルが減った要因には、安全上の理由で抜きにくいレイアウトのコースが増えたことと、1994年からレース中の給油が認められたことを契機に、ピット戦略が勝敗のカギを握るようになったことが挙げられよう。クラッシュ、リタイアのリスクを伴うバトルよりも、ピットインのタイミングで相手の前に出ようという作戦が主流になって久しい。
また、ドライバーのラインアップを見ると、2007年はライコネンが初めて年間王座を取ったが、ほかに王座の経験があるドライバーはアロンソだけ。ベテランと呼べるのはフィジケラ、クルサードぐらいだろう。これに対し、例えば1991年シーズンは、王座経験者がセナ、プロスト、ピケの3人。マンセルはまだ無冠の帝王だったが、ほかにもベルガー、パトレーゼ、ブーツェン、アルボレートなどの優勝経験があるベテランや、新進気鋭の存在だったアレジ、そして途中からは若きシューマッハも加わった。ドライバーズ・ラインアップに並ぶ名前の重みが違う、とでも言おうか。
当時と比べて才能あるドライバーが早くからF1に上がってくるようになったことは歓迎すべきことだが、その分、経験豊富なベテランが居場所を奪われ、エンターテイメントとしてのレースの魅力も失われている気がしてならない。最近では数少ない「やんちゃ」タイプだったモントーヤも、優等生ばかりの今のF1に見切りをつけたかのように去ってしまった。速いがリタイアも覚悟しなければならないタイプのドライバーは、今のF1では生きにくいのだろう。残念なことだ。
今のF1に必要なものは何なのか。そんなことを考えさせられるDVDでもある。