海老沢泰久さんが亡くなって、もう3年が過ぎようとしている。この本には、全く同じ言葉が2度登場する。著者が、その価値があると判断したからだろう。“本書は「週刊朝日」に連載された1986年5/9号から12/26号までの34回分に、新たに5章を加筆したものである。”
----- Original Message -----
彼(桜井淑敏総監督)はシーズンが間近になると、F1チームのすべての人間を集めて彼らに自分と同じものを求めた。ホンダ・エンジンがF1のナンバーワン・エンジンになったことはいまや疑いようがなかったが、重要なのはそれを扱い動かす人間で、人間がもっともすばらしい働きをするのは使命感を持ったときだと信じていたからである。
彼は言った。「みんなも感じていると思うが、今年はホンダがワールド・チャンピオンになれる最大のチャンスだと思っている。われわれはいま、そういうところへきつつある。チャンピオンになれるのは、おれたちばかりじゃなく、本田宗一郎顧問をはじめ、ホンダの人間全員の夢だ。きみたちはそれが実現できそうなときに、選ばれてここにいる。昔やった人間も、途中でやめていった人も、本当は全員いまここにいたい気持ちだと思う。しかし、いまここにいられる幸運をもっているのはきみたちだけだ。そのことを肝に銘じて、今年は仕事以上の使命感を持ってレースに臨んでもらいたい」こうしていよいよ1986年のシーズンがはじまった。
タイプしていて、また泣きそうになった。こう語りかけた桜井淑敏もホンダを去り、本田宗一郎もアイルトン・セナもこの世にはいない。この本には、歴代社長(本田宗一郎、河島喜好、久米是志、川本信彦)4人すべてが登場する。(吉野浩行が5代目社長に就任したのは、1998年。)つまり、ホンダという会社の社史であり、「F1地上の夢」に取り憑かれ、命を賭けて闘った男たちの物語なのだ。ホンダ関係者は何度でも読んだほうがいい。
海老沢さん、きっと天国で本田宗一郎氏とアイルトン・セナにインタビューしたのではないだろうか。読みたくても読めないけど。