今から百数十年以上前の日本の姿を知るには古写真をたどるしかありません。当時の文献史料は多く残っていますが、残念ながら具体的なイメージがつかめません。その点、写真は全てを瞬時に理解できる貴重な資料だと言えるでしょう。貴重な写真を掲載しているかは、少し見ただけですぐに理解できますので。
写真家フェリーチェ・ベアトは、1825年に生まれ、1863年に来日し報道写真家として数多くの写真を残しました。横浜居留地に写真館も開いています。
写真の鮮明さを見るにつけ、ベアトの技術水準の高さに感心しました。彼がこれだけの写真を残さなかったら、当時の日本の姿や日本人を知る術が大幅に制限されたことは容易に伺えます。当時生きていた人がまるでそこにいるかのように残っているのも彼の写真があればこそだと思います。
どの写真からも現代では見ることのできない光景が展開されています。珍しくまた、懐かしい風景にタイムスリップする喜びはどのページからも得られました。現代人にとってもエトランゼ(異邦人)の気分で眺められるように思います。彩色された写真の生々しさはまた格別で、そこに生きているのではという感覚を覚えました。日本も日本人も物凄く変わりました。タイムマシンで往時に降り立った雰囲気に浸っています。
4ページから「刊行にあたって」で横浜開港資料館の斎藤多喜夫氏による解説は参考になりました。
「東海道の一風景」など時代劇さながらの光景です。「江戸の大名屋敷」から当時の大名家の雰囲気が伝わってきます。戊辰戦争直後で建物が焼失した大阪城の大手門の写真からは荒涼とした景観が広がっていました。芸者による琵琶、琴、三味線の合奏風景は異国情緒があってよき被写体となっています。