本書は、アメリカのリーガル・フィクション界を代表するベストセラー作家、リチャード・ノース・パタースンが『罪の段階』の続編として発表した、前作をしのぐボリュームを誇る大巨編である。
「このミステリーがすごい!」では’00年海外編第9位にランクインしている。
登場人物のほとんどは『罪の段階』と同じで、主人公はサンフランシスコの辣腕弁護士、クリス・パジェット、46才。彼は今回民主党より上院選への出馬を要請されている。
クリスのアシスタント弁護士で恋人でもあるテリの、別居中で生活能力のない夫、リッチーが死んだ。ふたりは離婚訴訟に関して6歳の娘、エリナの監護権で争っていた。リッチーは妻をクリスに奪われたと思い、彼を恨んでいた。
殺人と見た検察はクリスを容疑者として逮捕する。彼の弁護に乗り出したのは『罪の段階』で判事をつとめたキャロライン・マスターズだった。真相は、幼いエリナひとりの胸に・・・。次々と覆される証言、日々入れ代わる陪審員の心証。そして息詰まる公判の後に待っていた真実とは・・・。
前半はなんとも食えない男、リッチーに、存命中も死後も翻弄されるテリやクリス、そしてクリスの息子、カーロの姿が、食傷気味になるほど描かれる。
しかし、後半のほとんどを占める法廷場面では、陪審員の選出から最終弁論に至るまで、キャロラインがふるう熱弁の大立ち回りは圧巻で、本書の最大の読みどころである。
クリスの、弁護人にも明かさない謎の行動。目撃者の証言。本当に彼は殺っていないのか。最後まで真犯人が分からない展開。クリスやテリ、カーロやエリナをめぐる家族と愛情の人間ドラマ。そして警察・検察の捜査にも公判にも影を落とす政治上の謀略。
本書は、前作を質・量共に超え、スリリングなエンターテインメントに徹した、リーガル・サスペンスの傑作である。