ついにレイ・ギラン在籍時の「あの録音」がオフィシャルで聴けることになった。本当に驚きである。
ディスク1は、トニー・マーティンがヴォーカルの従来の「エターナル・アイドル」に、「シャイニング」のシングルのB面だった「ブラック・ムーン」と「サム・カインド・オブ・ウーマン」(この2曲はあまり印象に残らない普通のハードロック)が収められている。
そして、ディスク2で、レイ・ギランの歌うあのオリジナル「エターナル・アイドル」が聴けるのだ。曲順が大きく異なり、またサウンドも微妙に違う(イントロのカウント、ギター・ソロ、ドラム)バージョンだけど、こちらがそもそもの「オリジナル」なのだと思うと不思議な気分になる。
1曲目が「グローリー・ライド」、2曲目は「ボーン・トゥ・ルーズ」だが、これがシンプルなハードロックで意外と良いのだ。途中のトニー・アイオミの老獪で艶っぽいギターソロが無ければ、80年代のNWOBHMバンドの演奏かと思ってしまう。それくらい従来のサバスとは様変わりした、モダーンなヘヴィメタの傑作と言えるだろう。
トニー・マーティンが、レイ・ギランの歌メロをほぼ忠実に、あるいはレイには歌えていない部分をきちんと歌いこなしていたのが、良く分かるし、マーティンの歌手としての器用さや力量が十分確認できた。本作は、冒頭カウントが入っている分余計に、デモっぽく聴こえるし、レイ・ギランのヴォーカル・スタイルもオジーやロニーとも異なるものだが、これはこれで素晴らしい。思うに、レイ・ギランは男の色気を感じさせる、なかなか歌唱力のある本格派のロック・ヴォーカルだが、サバスには普通過ぎたのかもしれない。
しかし、マーティンが参加せずに、これが市場に出ていたならどうなっていたのだろう。楽曲のテーマこそ同じだが、従来のサバスイメージとはかけ離れたストレートでさらっと洗練された作品なだけに、サバスの行く末が少し気になった。こうした軽快でキャッチーなサバス(何かダイヤモンド・ヘッドに似ている)も悪くはないが、ちょっと砕けすぎのような気がした。
実際には、サバスはマーティンを正式にヴォーカルに据えることによって、独特な様式美を打ち出し、浮上のきっかけをこのアルバムでつかんだ。その意味では、ブラックサバスの歴史の中で、この作品の果たした意義はとてつもなく大きいと言えよう。
ちなみに内ジャケは、「シャイニング」のヴィデオ・クリップが使われており、あの美人のお姉さんが写っている。マーティン時代の他のアルバムも、デラックス・バージョンで是非再発して欲しいものだ。国内盤はたぶん出ない・・・かな。