アルカンの「48のエスキース」を収録。ピアノはスティーヴン・オズボーン(Steven Osborne)、録音は2002年。シャルル=ヴァランタン・アルカン(Charles-Valentin Alkan 1813-1888)はワーグナーと同い年のフランス生まれの作曲家。さまざまなスタイルの技巧的なピアノ曲を書いた。
エスキースとは「素描」と邦訳される。断片的な小品が12曲ずつ4巻に分かれていて、全部で48曲。プラスして全巻の締めくくりとして「神を讃えん」(Laus Deo)が置かれる・・・この「全巻の締めくくりとして」という構成がまたアルカンらしい。というわけで、このアルバムには都合49の小品が収録されている。全体的なテーマがあるかというでもなく、メンデルスゾーンの無言歌やグリーグの抒情小曲集を思わせるような作品もある。いずれにしても曲の規模が小さく小節数も少ないから、いつのまにかどんどん進んでいってしまうような印象。
しかし、もうちょっと一生懸命聴くと、いろいろ面白い点も見つかってくる。特にアルカンらしいのは、一種の「見立て」曲が混じっていることだ。例えば15曲目にあたる「古い様式の協奏曲のトゥッティ」では古典的な合奏(トゥッティ)と独奏(ソロ)の対比を、1台のピアノで表現する。他にも第31曲は「四重奏曲の冒頭」と称し、弦楽四重奏曲の4つの弦楽器が奏でる音をピアノで表現したものだ。こういう点を楽しめるといよいよ「アルカン好き」皆伝が近い。
オズボーンのピアノも良い。技巧の安定感が高く、一音一音のクリアさが構造を明確に伝えている。これらの楽曲がいま一つマイナーにしても、たまにはこういうのも、という趣味的一枚として置いておきたい。