ジャンル分けの不毛さを知りつつも、ポストブラック、と言ってまず思い出すのが、私の場合この FEN と Alcest、対称的ともいえる二つのバンドです。
暖かさと優しさに溢れ、心の琴線を強烈に刺激してくる Alcest に対し、この FEN は、寒々とした哀感の中に、瞑想的で崇高な美をもたらしてくれる、かのような印象が有ります。
そして、前作 『The Melediction Fields』 の衝撃からほぼ二年。鋭角的な黒さをやや増しながら、FEN が帰ってきました。
前作は、素晴らしい感性に溢れながら、曲の中に無駄なパートや中だるみ的部分が少々感じられました。しかし今作では、そういった贅肉が一切取り払われ、全ての音が構成上不可欠であるかのような完璧な曲創りに成っています。
8分〜10分の曲が5曲も有りながら、どの曲をとっても集中が途切れることなく一気に聴き終えてしまうクォリティの高さ、アルバム全体を通して聴き終えた時の、不思議なほどの疲労感の無さ。全て楽曲から無駄が取り払われた影響ではないでしょうか。
路線は前作を踏襲していますが、シンセの使い方がかなり進化しているように感じます。ストリングスの被せ方がより計算され、更に前作では無かったバイオリンのような音等によるメロディの強烈な哀感など、新鮮な要素が加味されています。
ギターも、幻想的なアルペジオや胸を締め付けるようなトレモロは勿論、カッティング時のクリア&歪み音の使い分けも、『さすが!』と唸らされます。
ヴォイスは、クリア・グロゥル・シャウトの三つを使い分けていますが、グロゥルのエコーがやや弱くなった為か、その部分に若干の粗さを感じる事が有ります。これが唯一の、不満と言えば不満ですが、それとて、楽曲の素晴らしさに打ち消されてしまう程度。
シャウトはパワーアップしましたね。曲後半の盛り上がり部分でこのシャウトが飛び出すと、それだけで鳥肌が立つほどです。
どの曲も全て好きですが、私的には、アルバム後半の方に、より魅力を感じます。そのせいか、ついつい何度も聴き返してしまう・・・。
結果、誰が何と言おうと、これは名作です。