だが、実は経済学的な視点に立っても、環境保全に取り組むことには合理的な理由がある。「環境」には資源の提供や廃棄物の処理といった機能がある。環境が悪化すれば、経済成長にもマイナスの影響を及ぼすことは避けられないのだ。
本書は経済学の一分野となった環境経済学の基本原則や理論を解説するもの。1993年に英国で発行後、高い評判を得たという一冊である。
「市場機能」不全で環境悪化インセンティブの働く仕組み必須
興味をそそられるのは、環境と市場の関係を論じたくだりだ。環境経済学では、環境がここまで悪化した原因は市場機能が正常に働いてこなかったためと説明する。「環境資源を使用し環境汚染を引き起こしている企業は、その費用を正しく負担していない」。これまで、その費用は社会に押しつけられてきたから、企業が環境保全に取り組むインセンティブは働かなかった。
では、どんな仕組みを構築すれば環境悪化を食い止め、改善することができるのだろうか。本書では環境税、課徴金、デポジット制度(預託払い戻し制度)など欧米諸国が取り入れる、さまざまな仕組みの内容と効果を検証する。
こうした記述を読み進めていくと、日本で経済的インセンティブの働く政策導入がなかなか進まないことが気になってくる。いずれの政策も、導入した場合の産業競争力の衰えや消費の減退を懸念する声が根強い。しかし、慢性的な不況下、市場機能が働かなければ環境保全型商品・サービスの普及に弾みがつかないのは明らかだろう。環境汚染を防げなければ、結局、産業界も手痛いしっぺ返しを受けるのだという視点が忘れられているように思えてならない。
タイトルを見ると、とっつきにくい内容に思えるが、学生や専門家ではなく、一般の読者向けに平易な言葉で書かれている。一般のビジネスマンは触れる機会の少ない環境経済学を概観できる入門書として一読の価値がある。
(日経ビジネス 小林佳代)
(日経エコロジー 2001/05/01 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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