この本はいままでSOA抱いていたサービスの粒度やサービスレイヤーなどの疑問が一気にスッキリ整理できた思いがしました。著述されている考え方はアーキテクトが日常実践で論理設計する手法に似ており素直に理解できます。
まずSOAはEnterprise IT のAgility を復活させるためのキー・エレメントであるとしています。サービスの定義については、3つの異なったエリアがあることを示し、サービスの特性によって(なんと粒度ではなく)4タイプにクラス化できると主張していることは説得力があります。さらに、これらを配置するSOAレイヤー・アーキテクチャを定義しており、これはいわゆる3層アーキテクチャとは異なるとの指摘もアーキテクトとしてよく理解できます。サービスは多段でフラクタル性はあるものの、複雑にはせず疎結合化によるAgilityを確保するにはこのSOAレイヤリングの考え方で十分であると思われます。
いままであまり話題にされてこなかったSOAのプロセス・インテグリティ、非機能的要件(スケーラビリティやアベイラビリティ、SLAなど)の解説があり、現実性の確保に大きく貢献しています。日ごろから疑問であったEAIとSOAの違い、親和性、相互利用性も解説され現実的で評価できると考えます。
さらにエンタープライズの視点からSOAに特化したProject ManagementやITガバナンスの視点が必要であり、既存の各手法にSOA向きのルールを付加すべきと提案しておりエンタープライズ的な視野を強化させています。最後に4つのSOA事例とそれぞれのLesson Learned が示されています。
文章も難解ではなく、丁寧に著述されています。しかし不満もないわけではありません。たとえば、ESBに必要な機能の解説が少ないし、エンタープライズレベルのSOAのガバナンスを記述しているのであるからEAとの関連付けも解説がほしいと感じました。しかし、ITアーキテクトがいま読むべき旬の本であると思います。アメリカ発でない本でもあり、実践的なアーキテクトが元気になれる本です。