これまでLPフォーマットで親しんで来ただけに、長年このコンプリート盤CDを聴くことに抵抗があった。傑作「Uptown」しかり、半世紀近く経ってから全長版を出されたところで、こちらはどう反応すれば良いのだ?世の中器用な音楽ファンばかりではないのだ。全貌をさらけ出すなら、なぜもっと若い頃に脱いでくれなかったのだ。オリジナル盤は60%がスタジオ録音で40%がライブだった(99年ライナーより)などと今更言われたところで、感動が目減りするだけではないか。
一大決心して、ようやく聴きました。まるで昔の彼女に会うみたいで、ここはオトナの心の準備が必要なのです。
おおっ、「ニューポート・ジャズ・フェスティヴァル組曲」は、何とライブ版(ディスク1枚目)の方が勢いがあるではないか(オリジナル盤は56年7月9日のスタジオ録音を収録)、「伝説の27コーラス」ポール・ゴンザルヴェス激演は観衆のリアクションがCDの方がクリアーに聴こえる(ライナーによれば、当夜の観衆約7000人)、そして多くの人が指摘するように50年近く前の録音だが、とんでもなく音の分離がいい(ホーンやピアノはもちろん、ドラムスの響きがCDでもスゴイ)。ちなみにサックステクニックとして付け加えると、ポール・ゴンザルヴェス伝説の27コーラスは、テクニックとしては不可能ではない。ローランド・カークも多用した、音を出しながら同時に鼻からブレスをする「ノン・ブレス」は、当時から一部のヒップなプレーヤーには知られていたのかも知れない。ポール・ゴンザルヴェス伝説の27コーラスにどういうマジックが施されたのは、新装ライナーを読んでのお楽しみ!ちなみに私はアルトですらいつまで経っても出来てませんが、大したモンです。
50年前のストリートの喧騒をノイジーに演出し、各プレーヤーをここまで本気にさせたデュークのプロデューサーとしての仕切りの凄さ!音楽の感動とはどういうものか、という根源的な問いに対する解答が、すでに50年前に録音されたこのCDに集約されていることを思うと、軽い眩暈すら憶える。
1956年のニューポート、CDになろうがLPだろうと、聴く度に打ち寄せる感動に変りはない。
デュークがこの時代に放った矢に反応するように、「時代のA列車 / The underground railroad 」が車輪を軋ませながら動き出したのだ。
音楽を集めることと聴くことは、確かに大きく違う。もっと言えば、そのアーティストの音楽を全部聴いて全貌を知ることと、そのアーティストの作品単位で感動することも違う。
このアルバムのおかげで、マイルスの「フォー&モア」とキング・カーティスの「ライブ・アット・フィルモア」がひとつの線で繋がった。この先何回も何回も、このコンプリート盤CDもオリジナルLP盤も聴き倒すことだろう。
私の無人島の1枚は、これしかない!
A列車よ、永遠に・・・・。
LOVE YOU MADLY !!!!!!