LAに拠点を置きワールドワイドな活動に着手してかれこれ20年…前作『Uncompromising Innocence』(これもかなりの名盤でした!)から3年、遂に届けられた真理さんのニューアルバムです。常にその時点での最新の音楽テイストを盛り込み、より進化させたソングライティングとサウンドメイキングを試みるのが彼女のスタイルではありますが、それにしてもちょっとびっくりな音が詰まっています。前作に続きマイケル・シャーヴェスがブギーなギターリフを奏でたロックナンバー「Pursed Lips」、“ありがとう”のキュートなサビメロ/ハーモニーが印象的な「Twinkles」などはいつもながらのポップテイストではありますが、今回まずド肝を抜かれるのはヴァイオリン/チェロをフィーチャーしたストリングスの音世界でしょうね。ギリシャ神話をモチーフにしたタイトル曲を筆頭に、半数以上の曲で聴ける生のヴァイオリン/チェロに彼女のストリングス・シンセ、ピアノが重なる音世界は大きな聴きどころになっています。そして「Imaginary Love」においては、ヴァン・ダイク・パークスとの共演が実現しているのですが、これも何処か必然的な流れに思えるほど、そもそもの楽曲がドラマティックな仕上がりになっていますね。「Imaginary Love」はインスト曲ですが、中盤での真理さんのピアノのブレイクから一転するドラマティックな展開劇はもう鳥肌もの! シンプルながらもエレピとハープシコードがフィーチャーされた、飯島真理流ゴスペル「Hello Goodbye」以後の終盤の流れは必聴です。「Twinkles」「Like Never Before」では『KIMONO STEREO』以来の共演となるイアン・ベアンソン(パイロット)がギターをプレイ。マスタリングは英国で行なわれたそうですが、ほのかにブリティッシュな香りが漂う音像も新感覚。過去のアルバムの『○○○○○』っぽい、みたいな言い方ができないほど新境地なのですが、余韻を効果的に散りばめた彼女ならではの繊細な音世界と、裏腹に随所でロックしてみせる相反する要素が聴きどころと言えるでしょう。今回、日本語詞曲は「Suki To Ienai」だけですが、、日本のファン向けに作ったというよりも、“むしろ日本語でしか歌うことができなかったんだろう”という気がしています。その辺も邪推しながら聴くとこのバラードは深い。相変わらずの歌声は凛々しさも健在ながらも「Hello Goodbye」はあえてノンリヴァーブで歌っていたりと、随所で真理さんの底力を感じさせてくれます。なんかもう国境線を超越したポップアルバムですね。グリーンデイ、ミューズ、スフィアン・スティーヴンスなど、世界的にストーリーアルバム的なトータリティをもった作品の流れが生まれつつありますが、彼女の常に先駆的なアンテナはその辺も見事に捕らえているかのようです。とはいえ、1曲1曲はメロディアスな真理節によるもので、どういう聴き方でも楽しませてくれる1枚。でも何年かして何百回目に聴いたときに突然「あっ!!」って気づくようなミステリアスさも秘めているかも。できればダウンロードではなくて、パッケージまるごとで盤聴きしていただきたい。1ファンとして真摯な想いです。