今作「完結編」では、今まで物語の背景にずっと影を落としていた主人公「ウメ」の家族の問題に遂に決着がつきます。
綺麗事を並べて何となく大団円で終わってしまう漫画が多い中、「EVIL HEART」は違いました。 登場人物それぞれの心情を深く掘り下げており、特に各自の「弱さ」に対してどう向き合っていくかを真摯に描ききっています。(今回は特に、今まで大きく語られなかった兄「滋」の心情が垣間見えてくることで、互いの本心と今までの感情のすれ違いが露わとなり物語は最高潮に!)
登場人物それぞれが自身の弱さを認識しつつも、時にはそこから逃げ出したり、敵意をぶつけ合ったり…特に主人公「ウメ」の合気道に対する向き合い方を通じて、様々な感情や葛藤が伝わってきます。
本作品で最も印象的なのが、ウメの表情…特に「目」です。 合気道に取り組む真摯な目つき、重圧から開放されたときの穏やかな目つき、そして兄を憎む邪悪な目つき…純粋であるが故のこれらの真っ直ぐな感情が武富先生の鋭い筆致で描かれており、特に本作では今まで以上に気合いの入った1コマ1コマから目が離せません。
絵から溢れ出て来る様々な感情に、読んでいる間ずっと涙が止まりませんでした。 そして、読み終わった後も登場人物各々の心情を思うとまた涙が…ここまで感情を惹き付けられる漫画はなかなか出合えません。
武富智先生は今まであまり名前が挙がらなかった漫画家ですが、もっと評価されるべきだと思います。 特に本作「EVIL HEART」は、未見の方は是非最初から通しで読んで欲しいです。
一度は打ち切りという憂き目に遭いながらも、(前作「氣編」も含めた)書き下ろし3冊という前代未聞の刊行で、読者にとっても、そして恐らく武富先生にとっても理想の形で幕を下ろすことができたのではないでしょうか。
EVIL HEARTという素晴らしい漫画をここまで描き切ってくださった武富智先生に感謝します。 どうもありがとうございました。
この漫画は私にとって一生の宝物です。