ベスト版発売を機に、攻殻機動隊をはじめて観ました。
作品全体の尖った雰囲気が、無理な背伸びをしていないか不安でしたが、そんな予想を裏切るおもしろさ。
TVシリーズ全26話のダイジェスト版ともいえる本作。
TVシリーズのファンからすると、さまざまなエピソードや情景描写がカットされるなど、不満の残る部分もあるようです。
しかし、 (自分のような) TVシリーズを知らない初見の人間には、サクサク進行するテンポは快感、1巻だけで話が完結するのも、手軽に攻殻を観ようという気にさせる大きなメリット。
(サイバーパンク以降の?) SFはダメという人でないのなら、とくに説明不足を感じるような不満もないでしょう。
むしろ、日本のTVドラマが苦手とする政治や社会の問題を、こういったアニメの方がより上手に掬いあげているのには感心させられたほど。
緻密に描きこまれた画面にくわえ、 (映画の吹き替えでおなじみの) シブイ声優陣の演技、さらには、キレのいい菅野よう子の音楽などがストーリーに説得力を与えています。
脳内を電子化した人間たちが、さまざまなデバイスをとおし情報交換を行うという、荒唐無稽ともいえる世界を背景としながらも、政治や企業の社会不正をシリアスに描いていく内容は、かえってそれら問題を、よりリアルに浮き彫りにするようなところも。
サリンジャー 『
ライ麦畑でつかまえて』 の一節が、ひとりの人間像を浮かびあがらせるなど、デジタルずくめの世界でかいまみせるアナログの存在感が、あざやかな効果を発揮しています。
本編だけで2時間35分という内容も、ふだん2時間平均の映画を見なれた人には、ふつうに満腹感が得られるボリュームでしょう。