私がまだ大学生で、生意気なジャズファンだった頃、国内盤を買うお金がなくて、よく輸入盤コーナー(もちろんLPです)を漁っていたものでした。ブルーノートのような有名どころはともかく、ヨーロッパ盤は内容がよくわからないことが多く、そういう時に購入の決め手となったのがジャケットでした。センスのいいジャケットのLPからはいい音楽が聞こえてくるように思われたのです。そのうち、「ここはいつもシャレたジャケットで、個性のある録音だなあ」と気づいたのがECMでした。
ECMはジャズばかりでなく、スティーヴ・ライヒやアルヴォ・ペルトのような現代音楽、さらにはアンドラーシュ・シフらクラシック畑まで間口を広げてきましたが、そのジャケットにはつねに、筋の通った美意識が表出されています。本書の、カラーのジャケット写真をゆっくり眺めていると、「ああ、これは結婚式のBGMを探しにいった時に(本題とは関係なく)買ったなあ」などと記憶がよみがえってきて、しみじみさせられます。
値段もけっこうしますし、カタログですから内容が「ECM物語」になっているわけでもありません。多くの方にお勧めできる本ではないかもしれませんが、昔からECMのアルバムをけっこう聴いてきたという方、ジャズや現代音楽のアルバムのジャケットデザインに関心がある方には、楽しんでいただけると思います。編集もていねいで関係者の熱意が感じられます。