最近の諸作では、The Midnight Ramble Music Sessions, Vol. 2の"Battle Is Over but the War Goes On"が再生?リーヴォンの嚆矢かと思っていた。演奏が終わり、ステージ上の"決まった!"という空気がこちら側に心地よく伝播される。しかし、そこにさえ主役の抱える健康上の不安は見え隠れして、退院後加療中といった重苦しさを払拭できずにいた。本アルバムジャケットのセピア色の画像では事の成り行きが読みきれず、実は購入には二の足を踏んでいた。まれびと氏のレヴューにハッとして急いで購入、謹聴した。いきなりのタム2発は往復ビンタのようである。"しっかり聴けヨ"てな感じ。S.アール作3のイントロでフィドルが厳かに響く頃には、すでに没我状態。全てがよい方向に運んだのだ(ろう)と安堵する。ホームメイド録音というときの甘さなどかけらもない確実・着実な音。そこら中にばらまかれているギミックに満ちた音どもが顔を赤らめて退散しそう。10の冒頭のカウントの楽しげなこと。J.B.レノアーの12では、ズバリ"Feelin' Good"と繰り返される。そしてB.ミラー作のラスト。当方おセンチに音楽を聴く者ではないが、先に失われてしまった聖なる2つの声が現れては消え不覚にも胸が詰まった。越えられないはずのものがいくつか更新されたのではないだろうか?
数回聴いただけの印象では心許ないので、蛇足を承知で追記する。(2008/1/4) まず、いずれオーディオ誌などで指摘されるだろうが(現時点ではされてない?)本盤が非常な高音質盤である点。できるかぎり大型のスピーカーで聴かれたい。1、2などトラッド・ソングでありながら、臆病な子供なら泣き出しそうなタイコの音。ただならぬリアリズムを感じる。3はスプリングスティーンのライヴ・イン・ダブリンを連想させ、ともにアイリッシュ・ミュージックの底力を思い知らされる出来だが、(ピート・シーガーなどと限定せず)汎アメリカンミュージックを自在に操った点、また小編成を利した点でここはリーヴォンに軍配をあげたい。いわゆる南部ロック的なものは6くらいで、ほぼ丸ごとさらなるルーツへと深化していることに驚く。この点でもBSの新盤(未聴ながら)は本盤の前にやや分が悪いのでは? もちろん、バンド(ザ・バンドではなく)が眼前に現れるというような(音場型の)録音ではないが、滲み・掠れ・誇張などのないヴォーカル群、(良い音の)楽器がピタリと定位するのが気持ちよい。特に、音数の少ない8、12などにはドキリとする。飽きさせない構成も上手いと思うが、案外翳りがなくアッケラカンとしたこのような楽曲に、復調したリーヴォンの真骨頂があるかも知れない。とまれ、こんな夕餉と宴がまっているのなら、日々泥まみれの労働もまた楽しいのではないか。聴くべし!