変節の人である。彼女、ミシェル・ンデゲオチェロは最初ジャズファンクというわりかし当時のコンテンポラリーなところからスタートして、その後、フォークやらヒップホップやらダブやらジャズと、出すアルバムごとにきわめて分かりやすい音楽的な変節を遂げてきて、前作「夢の男」は遂にロックだった。前作のロックアルバムを出すまでの彼女は、ちょっと天邪鬼入ってるにしても、それでもいかにもブラックアーティストが手を出しそうなジャンルにまとまっているという意味では、まだわりかし一貫性があったんじゃないかと思う。個人的には前作の「対ブッシュアメリカ」的な彼女によるロック宣言をとてもかっこいいと感じ興奮したが、やはり彼女の音楽の中心にあるファンキーな黒っぽさを期待する人にとっては、なかなかついていけない内容であったろうことは想像に難くない。
そんな流れを踏まえて聴いてみた最新作「Devil's Halo」。結論から言うと本作も前作のロック路線を踏襲していて、「黒く」ない。というか黒っぽさが感じられないのは前作以上だ。だが、このアルバムは別の意味で「黒い」音楽だと思う。ダークなのである。本作はどこも国内盤を出さない全くひどい状況であるため歌詞内容は分からないが、それでもアルバムタイトル「悪魔の後光」の名が示すとおりの、まさに聴く者の心の闇を照らすような作品といえるのではないだろうか。私はデビュー以来の彼女の大ファンだが、ちょっとここまでの作品を作ってくるとは思っていなかった。あえて引き合いに出すならプリンスの「サイン・オブ・ザ・タイムス」やレディオヘッドの「キッドA」に近い手応えを感じた。全く持って素晴らしい。稀代の名作である。