かつて国内未発売の幻の名盤として紹介されたローランド・ハナの初リーダーアルバム(1959年制作)。ハロルド・ローム作曲のミュージカルナンバー集で、トリオとカルテットの演奏を収録している。
まず、ブーツを履いた女性の脚と、ウィンチェスター銃をあしらったアート感覚みなぎるジャケットに5つ星を進呈しよう。本来ならLPで所有し、壁にでも飾っておきたいところだ。
そして、最初のトリオ演奏「アイ・ノウ・ユア・カインド」が絶品! この曲だけでお宝もの。たまに取り出して聞きたくなること間違いなし。
百花繚乱、咲き乱れた花の群落が目に浮ぶ、アップテンポの名旋律。ハナは霊感に打たれたように、フレッシュなセンスと、はじけるタッチで原曲をひときわき美的に描き出す。まるでバラやジャスミンの香り漂うパラダイスを一気に駆け抜けるような演奏だ。投げられたサウンドの花束に、もううっとり……。
また、その次の「フェア・ウォーニング」も素晴らしい。こちらはケニー・バレルを含むカルテットの演奏で、前曲同様、リズミカルに迫りくる曲調。バレルが暖かい音色でラブリーなテーマを奏でると、ハナがエモーショナルなアドリブの華を咲かせてゆく。
この1、2曲目が最大の聴きどころだが、最後までハナは若武者のように血気盛ん。やはり処女作だけに意気込みが違う。興味深いのは快進撃を演じるハナにつられ、バレルが満面に笑みのこぼれる明快なプレイをしていることだ。ふだん“ミステリアス・ブルー”ともいえる音色で余情豊かに迫る彼とは、かなり陰影を異にしていよう。
ちなみに、ハナの2作目に当たる「イージー・トゥ・ラブ」も同じレーベルから出ており、こちらはスタンダードが中心。オーソドックスな解釈による快演だが、ミュージカルナンバーを斬新、華麗に料理した処女作に軍配を上げたい。