OLが田島氏一人になってからの意欲作。様々な世界の音楽が混ざり、混沌とした中で田島貴男という音楽を相対的に形成し、感じてゆく作品となっています。そのヒントは田島氏がクレモンティーヌの作曲をした時にありました。ファンサイトの知識をお借りすると田島氏はその際、フランス、イギリス、アメリカと様々なポピュラー音楽が不思議な形で共存して混ざり合う無国籍さを意識し、それは初めての感覚だったと述べているのです(詳しくはファンサイトで)。この無国籍さこそ今作のキーワード。様々な音楽や芸術から創造性のインスピレーションを得ようとする田島氏ならではの、広がりゆく感性の欲求を感じる作品でした。
このブレンドされた音楽の感覚は、我々聴いている方としても予測のつかない面白さがあります。1「Hum a Tune」でいきなりエスニックな音色から入るロックが鳴り、2ではブラジル音楽のトロピカルさです。更に4「青空のむこうから」では中東の弦楽器ウードが用いられるのですから。従来のOLに対する固定観念を取り払うことで音楽に出来る領域が増し、自由を獲得していますね。かつてソウルやジャズでみせたストイックさから、積極的に世界観が広がったようです。
象徴的なのは3「ガンボ・チャンプルー・ヌードル」。沖縄の三線から始まり“トーキョー、オキナワ、ニューオーリンズ”と歌われる精神は無国籍料理のような今作を表します。尚大ヒット曲9には全く影響なく、シングルと比べ、ストリングスがない等全体的に音がスリムです。でもその美しい陶酔感は変わりません。
6「ワーズ・オブ・ラブ」は田島旋律の甘美さが炸裂するスムースな心地よさで1と並びベスト『変身』にも収録されました。7「黒猫」は再び中東かインドかという神秘性。ラテンなノリも感じさせます。8は緩やかなラテン、10はカントリーのようで複雑な進行をみせ、最後にマニアック曲が待っていました。