著者は『タリバン』、『聖戦』等日本語に翻訳された著書もあるパキスタン出身の気鋭のジャーナリスト。本書では2001年〜2008年初期を対象に、アフガニスタン及びパキスタンにおける「テロとの戦い」の経過を描く。通読すると、テロとの戦いにおいてはアフガンとパキスタンを一体的に捉える必要があることがよく理解できる。
パート1は9.11からアフガン侵攻までである。カルザイがパキスタンからバイクでアフガニスタンに戻るところなど、読み応えのある描写にひきつけられる。
パート2とパート3が本書の主眼であり、タリバン放逐後のアフガンにおける国づくりの失敗と、パキスタンがタリバン及びイスラム過激派の安全地帯となり、混迷を深めていく様子を描いている。著者の主張はそれほど新しいものではなく、1.米国がアフガン侵攻が早期に終了した後重点を早期にイラクに移し、国づくりへの努力を怠った、2.アフガン内の兵員の数も縮減された、3.軍閥の取り締まりが遅れ、また大統領に任命されたカルザイも軍閥の力を削ぐことができなかった、4.パキスタンではムシャラフ大統領がタリバン及びイスラム過激派の取締りを十分に行わなかったというもの。1.と2.は他の書に譲ると思われるが、3.と4.については詳細な記述があり読む価値が高い。ただ、固有名詞などが多く出てくるので、多少の予備知識があったほうがよいだろう。
パート4は一章ごとに異なるテーマを扱っている。13章のパキスタンの部族地域の話では、部族地域の旧態依然たる統治方法を刷新しなかったパキスタン政府に批判が向けられているのが面白い。14章はグアンタナモなどの話で若干浮いている。飛ばしてもよいだろう。15章はアフガニスタンにおける麻薬の話で、これも興味がなければ飛ばしてもよい。16章はウズベキスタンの話だが、これも唐突で蛇足気味。17章と18章はアフガン及びパキスタンの最新の動向。17章はタリバンの復活について、18章はConclusionとあるが本全体の結論ではなく、ブット暗殺から議会選までのパキスタン国内の動向である。なお、タイトルでは中央アジアも扱っているかのようだが、実際には全18章中1章(第16章)しか扱っていないので、若干大風呂敷気味ではある。
上記のようにアフガン、パキスタンにおけるイスラム過激派の動向については詳細な記述がなされ、これらに興味を持つ方にはお勧めの書だが、英語で400ページとかなり長いので、軽い気持ちで手に取ると途中で挫折しかねない。本の趣旨からすると邪道だが、アフガンの章あるいはパキスタンの章だけ飛ばし読みするというのもよいかもしれない。また、英文は平易なので、日本語訳がもし出るならばそれを待つというのも手だろう。