登録情報
|
そうした脳と身体の関わりについても多く語られているが、より本質的かつオリジナリティがあるのは「ソマティック・マーカー仮説」だ。
この仮説は、人がある選択を迫られたとき、何もないまっさらな状態から、どれが最善かを考えるのではなく、すでに蓄えられた知識や経験から起きる感情から、どれが最善かを考えている、というもの。
この仮説を支持する例として、アメリカで起きた工事監督フィアネス・ゲージのエピソードや、著者が実際に接したエリオット氏(仮名)の言動などが紹介される。いずれも、脳の前頭前野を損傷したあとも、理性は失わずに生活を続けていくのだが、判断力の欠如がおこり、人生が豹変してしまう。たとえば、人と会う約束を15日にするか17日するか、どちらの日でも問題ないのに「どちらのほうが天気がよさそうか」とか「どちらのほうが交通機関の乱れはなさそうか」とかで延々に考え込んでしまうのだという。
裏返せば、私たちのいろいろな選択の場面では、過去のよい体験・いやな体験などが作用して、直観的に将来予測をして、判断するということになる。
各部冒頭の「訳者解説」は、こんなものがあるのなら解説本を出せばいいわけで「いらぬお世話」と思ったが、本編が難解だからしかたがないかも。
翻訳の精度も問題になっているようだが、だからといって読み控えされるのはもったいないと思う。患者の事例のところとソマティック・マーカー仮説の部分はわかりやすいので、そこを読むだけでも得られる知見はあると思います。
だが、邦訳の表題がいけない。
なぜ原著に忠実に「デカルトの誤り」
としないのか、全く理解できない。「生存する脳」というタイトルをつけ
てしまったがために、著者がこの本の読者として想定している人たちの注
意を引きつけなかったと思うと、残念でならない。神経学者、神経心理学
者である著者が意識について大胆~~な仮説を~~展開している本書は、脳に
ついて関心のある全ての人々について刺激を与えてくれると思う。
また、本文中に見られるいくつかの訳語について、すでに日本の学会にお
いて定着している訳語があるのにそれが用いられていない。訳者は専門用
語の邦訳について専門家の意見をまったく聞かなかったと思われる。~
|
|
|