KRAFTWERKはいくつかのアルバムには英語盤とドイツ語盤が存在する。そしてそれは単に英語歌詞をドイツ語にしただけではないものがある。
今回ようやく発売されたリマスターBOXにもそれは失われていない。
『AUTOBAHN』1974年に出た当時はまだ人気の中心は西ドイツ本国だったので、タイトルも歌詞もすべてドイツ語で英語盤は存在しない。22分もあるタイトルチューンを短いシングル・テイクで出したところアメリカでブレイクした。ギターやフローリアンの美しい生フルートを聴けるのは貴重かも知れない。
『RADIOAKTAVITAT』1975年。前作と大きく違うのはオーケストロンを導入したこと。元々は「放射能」と「ラジオ」に絡む「電波」というコンセプトがあったようだが、90年代からは社会性のためか「放射能」に比重を強めた。そのためオリジナル・ジャケットはラジオみたいなものだったが、新しいジャケットは放射性物質のマークになった。二人のリズム演奏に若干のゆらぎがある。タイトルは英語、ドイツ語があり、歌詞は英語とドイツ語を織り交ぜたものが多い。そのため英語盤、ドイツ語盤という区別は存在しない。
『TRANS EUROPA EXPRESS』1977年。本作でもオーケストロンは多く活躍している。デジタル・シーケンサーの導入で全体の演奏が引き締まり、リズム隊はいよいよマシーンとシンクロするように叩いている。本作から英語盤とドイツ語盤が存在する。特に差異はない。元々ドイツ語盤だけ区切られタイトルが付けられていた「ABZUG」は今回から英語盤でも区切られるようになった。
『DIE MENSCH・MASCHINE』1978年。ヒュッター/フロールアン/シュルトのソングライティングにバルトスが加わった。こちらも英語盤とドイツ語盤がある。「DAS MODEL」の嗚咽を吐くような歌い方の部分は英語テイクにはない。彼らのスタイルを確立させた名作。
『COMPUTERWELT』1981年。ライブに運搬できるようにスタジオの機材をユニット化し、初の世界ツアーを行い日本にも来た。このアルバムこそKRAFTWERKのドイツ語マニアを生み出した作品でもある。「COMPUTERWELT」には英語歌詞にはない歌詞がドイツ語に存在する。「TASCHENRECHNER」はエンディングあたりの展開が英語盤と異なる。そのため収録時間に差異がある。「COMPUTERWELT 2」こちらも終わり近くの展開が少し違う。英語盤では聴こえないヴォコーダー・ヴォイスがドイツ語盤で聴こえる。「COMPUTER LIEBE」英語ではヴォーカルは加工された声だがドイツ語では生に近い声だ。あと英語盤であった左チャンネルのこもり(〜59秒くらいまで)はドイツ語盤にはない。
そしてフェード・アウト寸前にピッチが下がるというドイツ語盤のバグ?は実は今回も残っている。
『TECHNO POP』1986年「DER TELEFON ANRUF」の電話の音(ピーポーパーというもの)のピッチがドイツ語盤のほうが下がっている。オリジナル盤より曲が短くなってしまったのは残念だ。
当時の『ELECTTRIC CAFE』はKRAFTWERKは今ほど神格化されていなかったので、このサンプリング主体の内容は低い評価が多かった。
日本では確か半年くらい遅れて発売された。
『THE MIX』1991年。KRAFTWERKを「神格化」したアルバム。二人のリズム隊が抜けた。オリジナル・マスターを活用したミックスだがほとんど新録音といったものだった。いよいよコンピューター・ソフトに歌わせるようになったが、英語、ドイツ語も見事にこなしている。
『TOUR DE FRANCE』2003年。当時出たばかりのアルバムをいきなりリマスター?と思ったが、結局これだけ待たされて、音質やバランスは更に向上した。「AERO DYNAMIK」あたりでその違いを感じることができる。オリジナルではやや引き込んでいたパターンが今回前にでている。このアルバムは英語盤やドイツ語盤という区別はない。フランス語や英語の歌詞である。
もちろん、これは英語盤を聴いた上で楽しめるものだと思うけどね(笑)