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閉鎖された空間、人里離れた場所、若者の集団・・・ジェイムズお得意の舞台と道具立てで、ダルグリッシュが今回も静かに奮闘。そしてまたも、ラストにはお約束のアクションシーン(頭脳派かと思いきや必ず大詰めはダルグリッシュが体を張るのがパターン、これがなかなかにニクい)。彼のファンなら間違いなく満足できる作品。
そして、妻と子を出産で一度に亡くし、最初の事件『女の顔を覆え』で出会った女性とも自然消滅?してしまった、女性に縁のない彼にも、この作品では新たな出会いが・・・(ファンとしてはかなり複雑な心境だ。)
次回作が気になる。
イギリス聖公会について、殆どの人は何も知らない。知っているのはヘンリー8世が離婚をするためにローマンカトリックから分離した、という表面的なものではないだろうか。
この小説を読むと、イギリス国教会についていろいろと勉強できた、確かに。
high church, broad church, low church,
Richard Hooker, nonconformism, Anselm of Canterbury
などなどといった小説に散りばめられている事項を、ひとつひとつウィキペディア(無料で利用できるネット百科事典)で調べていった。
イギリス国教会について知る以上の収穫が、しかし、あった。それはこの女性作家の小説が読む価値があるということを発見したことである。推理小説としては推理は全く必要ない。ミステリーとしても、行き詰るようなサスペンスは全く無い。しかし、全編を通じて流れている『死にいたる存在としての人間』というタイトルの通奏低音が、なんとも心地良い。
著者は44歳で夫に死別している。この死別(bereavement)が通奏低音、あるいはメインメロディーになっている。これを軸として、犯罪を起こす人間のエゴイズム、人間の醜悪さ、それと対比される愛と友情と敬愛、更にそれに対比する欲情と堕落、またまたそれに対比する信仰……。人間の美しさと醜さを大きなキャンバスに、落ち着いた揺るぎのない筆致で描ききり、壮大な人間コメディー(喜劇ではない)、バルザックと同じことをやっている、それがこのジェイムズというイギリス女性作家である。
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