今回の白眉はラストの「虹〜Singer〜」。
小さな幸せが約束されている家庭を捨て、シンガーとしての業(ごう)のままに生きて、家族を失い、声を失い、声帯の手術を経て、15年かけて、もういちどキャリアを築き上げた宏美さん。
「全てを手にしたり 全てなくしたり あなたまで ひきかえにして」って、彼女の生きてきた人生そのまますぎて、こちらの目のやり場に困るくらい、心に迫ります。
"Yes, I'm a singer"のF-E-F-C-Bb、虹をかけるようなメロディラインでの音色の変化にぐっと来ます。雨の向こうに一瞬光る虹、涙の向こうに一瞬光る声。
最後のヴァイオリンのフラジオレットが虹のように消え、一瞬間をおいて、弦五部とピアノの追憶のようなハーモニー。歌声はその瞬間に虹のように消えても、その歌声に涙した「だれかのしあわせ」はずっとずっと残る。そんな服部隆之さんの美しいアレンジ。
歌姫岩崎宏美の輝かしいキャリアの中でもひときわ光る名唱です。ただ、涙。