Fu.cked Upはカナダ出身、男女混合5人組のパンクバンド。前作「The Chemistry Of Common Life」が絶賛されたり、英
音楽雑誌NHEにおける企画、未来の音楽界を担う存在「THE FUTURE 50」において第4位に選出されたりとシーンで注目
が高まる人達。既に多くのメディアにて高評価を受ける3作目で、初めて彼らの音楽に接してみた。
全18曲80分弱に及ぶ大作となった本作のコンセプトは「ロック・オペラ」。オペラの能書きは、とある電球工場で働くDavid
という青年が同僚のVeronicaと恋に落ちるが、彼女は事故で亡くなってしまう。一度は愛に対し絶望したDavidだが、最後
には再び希望を取り戻すというもの。
筋書き自体は全く目新しいものではないし、歌詞カードに刻まれた大量の言葉もそれ単体で感動を呼び起こすものではな
い。しかしそこに轟音ギター、高速ビート、メンバーPink Eyesのだみ声が注がれることで受ける感触が違ってくる。
バンドの顔である巨漢Pink Eyesのボーカル。何かに憑依される如く怒りの感情をぶちまけた歌・語りともつかないだみ声
は好き嫌いが明確に二分される。受け付けない向きには嫌悪感さえ感じさせるアクの強さなので、購入時はご注意を。
コンセプトは一応ロック・オペラとなっているが、Pink Eyesの発声はそれ単体で言葉が聞き取れるものではないし、彼も言
葉を明確伝えることを特に意図していない様に感じられる。バンドにとって重要なのは音自体に込められる熱量と、それに
伴うパフォーマンスなのだろう。演奏、Pink Eyesの声自体が聴き手を高揚させるものになっており、言葉の意味やテーマ
に縛られなくとも楽しめる創りとなっている。
轟音ギター、狂ったように暴れ回るドラミング、Pink Eyesの声と全てが熱い、いや暑苦しい。各メンバーが高い演奏スキル
を持ち、80分間終始高速でフル回転するグルーヴは乱れ無くばっちり決まっている。
個人的には「I have my legacy and I am proud.(「Truth I know」)」等のフレーズを絶叫され続けると気恥しさを感じなくもな
いが、彼らの音・歌詞を支持する若いファンが多くいるのは理解できる。あとは彼らの感性に共感できるか否かの問題だ。
ただ流石にこのテンションを80分続けられると聴き手のエネルギーがかなり消耗されることは確か。
音自体がエネルギーの塊のような作品だが、彼らの命を削るようなパフォーマンスと観客の酔狂ぶりが伺えるライヴ映像
に接すると、彼らの本領は音とパフォーマンスが一体化してこそ発揮されると感じてしまったのは本末転倒だろうか。