当時、世界最高性能を誇ったドイツ海軍のU-ボート。この映画の最大のメリットは、「戦争の美化につながらない映画」ということだ。戦争映画を製作すると、どうしても戦争が「かっこいい」行為とみなされてしまうことが多いが、この映画は「アクション」であると共に、「歴史映画」としても充分通用する力作だ。毛虱に困った乗組員が、衛生兵の前に行列を作っていたり、艦長がゲーリングを批判しているところなどを観ていると、制作した監督の歴史考証の力量の程を伺うことができる。余程、実在する経験者の話を聞いたのだろう。でなければ、ここまで鮮明に潜水艦内部の個々の事情を具体化できなかっただろう。この映画は私が学生時代に学校で観せてもらったが、このディレクターズ・カットは、以前の映像でカットされていた部分が多く取り上げられており、その中には「これぞ真実」というシーンが目白押し。まるで別の映画を観たような錯覚を覚えてしまった。ハッピーエンドとしなかった結末も、戦争を「愚かな行為」と結論づける優れた技法だ。数ある戦争映画の中で、「戦争を忠実に再現した映画」と呼べるのは、この映画と『戦争と人間』シリーズくらいのものだろう。別映画の『メンフィス・ベル』や『U-571』を合わせて観れば、そのコントラストに驚きを禁じ得ない。