現代のヒップ・ホップ・シーンに於いて、誰もがその仕事の"超一流"を認めるのは、MCではRakim、DJでは Premier(以下Primo)くらいではなかろうか。Primoの最高の仕事は、このジャジーでスモーキーな雰囲 気に支配された名作中の名作『Daily Operation』に集約されている。僕はこのアルバムを奇跡の一枚と呼んでいる。
Primoは、このアルバムで自身がラップの世界で生き抜く術のすべてを知り尽くし、あるいは神のこどく怒りのビートでわれわれを酔わせる術を知り尽くしていることを「明確」に示した。Guruのラップも忘れてはいけないが、Primoの仕事の賞賛に偏る意見が多いのもしかたあるまい。
僕はありとあらゆるジャンルの音楽を聴きあさっているが、Primoの才能は現代米国ミュージック・シーンでも異質である。世界最高のビート・メーカーはDr. Dreに譲るとして、他面に於いては、恐らくPrimoはDreを圧倒している。
現代の天才プロデューサーとして名だかいKanye Westは、Primoの仕事を賞賛し、もろに影響を受けたろう。
そしてあのJeru the Damajaの衝撃的なデビューアルバムでPrimoは史上最高のプロデューサーとなったのである。僕はここで断言したが、僕の意見に共感してもらえる人は山ほどいると確信している。かのPrince PaulやMarley Marlも尻尾まいて逃げてしまうほどの威力が、彼の音にはあるのだ。
後に『The Ownerz』で見せた熟練の仕事を見ても、衰えを感じさせないし、むしろ時代の先を行き続きけている。誰も彼に追いつくことはできない。僕たちは彼と同じ時代に生きていられて良かったと感謝すべきだ。そしてPrimoがもし居なければどうなっていたことだろうと恐ろしくも感じるのだ。
僕は、この作品に収録された、ジャズ・ラップをフィーチャーした「Ex Girl to Next Girl」を、PrimoのGang Starrでの仕事に於いての白眉と云わざるをえない。このアルバムはキャッチーでありシックであり、フリーキーなファンを獲得した。そしてポピュラーでありマイナーであるという難しい壁も超えてみせた。僕はあえて曲紹介を省くことにした。百文より一聴である。いちいち説明しなくてもPrimoの音なら誰だって"凄絶"なのは見え透いているのだ。僕は初めてラップを聴く人にこの作品を推薦している。Primoから入れば、間違いないからだ。すぐこれをカートに入れて貴君の耳にこの音を届けたい。素晴らしい体験ができるだろう。