古城や屋敷、欧州のような街並み、部屋の中の調度品や人物のファッションなどは、ゴシック的な趣あるビジュアルで、非常にこだわりとセンスを感じます。画力は高いですし人気の出そうな絵柄です。ただ、キャラクターの立ち絵やバストアップの達者さにはんして、アクションによる動きや、キャラと空間と立体の融和描写は稚拙という、少女漫画家さんに多いタイプです。
ストーリー的には、古城に住む超常的な魔法をつかう、数百年も生きる「狩者」。彼らと、彼らの住む島にまつわる謎がメインとなる話です。
ビジュアル面では、こだわりがきちんと明確になっている作者ですが、ストーリー面では、描きたい目的がぼやけていて、行き当たりばったりにストーリーを進めていることが見て取れます。
たとえば、島の謎を主体とした「ミステリ」を描きたいのか、島に関わる様々な敵との「攻防(バトル)」や「心理戦やトリック」、「アクション」が描きたいのか、過酷な戦闘によって生まれる絆と別れ、そして恋、といった人間関係の「ドラマ」を描きたいのか、個性が異なるキャラクターの行動や萌えを魅せたいのか、といったストーリー上でのこだわりが見えないということです。
あるいは「日常を描いた少女漫画」の手法の延長線上で描こうとしてしまっているようにも見えます。
こういう世界とキャラに謎がある動的エンターテイメントでは、主人公が受け身だとまず話が転がらないのですが、主人公グループが、クールで、慢性的なアンニュイ、受け身であり、目的もなく、当座の危機もなく、困ってもいなくて・・という、話が動きようがない状態になっています。
そのうえ、主人公達の日常を大きく変えてしまうような大きな事件によって話が転がる「巻き込まれ型」のストーリーでもありません。
したがって序盤は「学校の部活で微妙な関係になっている男女グループの日常を描いた話」と大差ないようなストーリーで冗長です。単行本一巻がまるまる、登場人物紹介兼、予告編のような内容の薄いものになってしまっているのはこのためでしょう。
状況設定的に見ると、生き残りの学生=記者 を主人公に持ってきて、彼の視点でアグレッシブに動かすストーリーにしたら面白かったように思えます。あるいはカイをもっと人間くさい少年らしい少年にして、コンプレックスか、好奇心などで自分から動くタイプにするか、過去に苦悩していて、そこにどんな謎があるのか焦点を当てたり、アリスを主役にして行動を起こさせるか、とにかくやり用はいくらでもあるように思えます。
なんとなくの嗜好でキャラと主役を決めてしまってる感じです。
2、3巻あたりまで読むと、ショッキングな事実が出てきたりするのですが、伏線も無しで、せっかくの「ストーリー上の真実」がなんとなくポンといきなり明かされたりで、「この謎をもっと伏線でふくらませてドラマティックな展開に出来るのでは?」と思える点が多々あるので、性格設定だけでなく、話の練り方も粗いのは確かです。
舞台となる島の雰囲気は良いビジュアルを構築しており、他のレビュアーの方がおっしゃってますが、「やりたいことは何となく解るけど出来てなくて、非常にもったいない」といった印象です。